Speaker
敏貴 梶野
(NAO/東京大)
Description
原始中性子星から放出されるアクティブニュートリノ(電子型、ミュー型、タウ型)および反ニュートリノは、質量階層に応じてMSW効果によるフレーバー振動を起こす。ブラックホール形成を伴う場合(failed supernovae)に期待されるニュートリノスペクトルの観測から、重力崩壊型超新星の状態方程式(EoS)を判別できる可能性を提案し、超新星発生頻度問題(supernova rate problem)および超赤色巨星問題(red supergiant problem)を同時に解決する方法を示す。一方、圧倒的に発生頻度が大きい中性子星形成を伴う超新星(normal supernovae)の内部では、さまざまな元素がニュートリノ相互作用の影響を受けて作られるので、ヘリウム層で生成されるのかあるいはより深い層で生成されるかによって、ニュートリノフレーバー振動の影響を受けたり受けなかったりする。このような元素群(neutrino elements)のうち太陽系組成比の再現に成功した例を示し、MSW効果を受けた元素の特異性から未知の質量階層を決定できる可能性を提案する。また、ニュートリノ光球の近くで自己相互作用によって引き起こされると考えられる集団的フレーバー振動(collective oscillation for coherent neutrino scattering)がrプロセス元素合成に与える重要性を指摘し、rプロセスの起源天体が超新星か中性子星連星系合体かという最近の話題の進展を紹介する。更に時間があれば、ステライルニュートリノが電子型ニュートリノとの間で起こす可能性のある共鳴現象と加熱効果についても、最近の数値計算結果を紹介したい。