18-19 May 2015
神戸大学 瀧川記念学術交流会館
Japan timezone

超新星ニュートリノスペクトルを用いた超新星ejecta最深部における元素合成への制限

19 May 2015, 09:50
50m
大会議室 (神戸大学 瀧川記念学術交流会館)

大会議室

神戸大学 瀧川記念学術交流会館

Speaker

敬 吉田 (京都大)

Description

超新星爆発時には原始中性子星から放出される大量のニュートリノによってニュートリノ駆動風が発生すると考えられている。1990年代から2000年代前半にかけてはこのニュートリノ駆動風は中性子過剰となりr-processが進み多くの重元素の起源になると考えられてきた。しかし、2000年代に超新星爆発の数値計算が緻密化されるにつれて、ニュートリノ駆動風は中性子過剰ではなくむしろ陽子過剰になることが明らかになってきた。そして、この環境下では鉄族元素より重く質量数が80-90程度までの陽子過剰核が形成されることがわかった。この重元素合成過程をνp-processと呼ぶ。最近では超新星爆発の多次元計算が行われるようになってきたが、まだニュートリノ駆動風が現れる数秒スケールの計算はほとんど行われていない。そのため、この時期におけるニュートリノスペクトルは十分に解明されてなく、ニュートリノ駆動風で起こる元素合成過程についてはまだ不定性が大きい。  ニュートリノ駆動風において生成される元素は主にニュートリノ駆動風のエントロピー、膨張のタイムスケール、1核子あたりの電子数(Ye)に依存する。この中でYeは原始中性子星から放出されるニュートリノのスペクトルに強く依存する。電子ニュートリノと電子反ニュートリノの平均エネルギーの差が大きいとYeが小さくなりよりr-processに有利になり、差が小さいとYeが大きくなりνp-processとなる。超新星爆発が近傍で起き電子ニュートリノと反電子ニュートリノのスペクトルが観測されればその超新星の最深部でどのような元素合成が進むかを推定することができるだろう。発表では超新星のニュートリノ駆動風における元素合成過程の最近の研究のレビューをする。またHyper-Kamiokandeなど大型ニュートリノ検出器を用いたコンバインド解析による電子ニュートリノと反電子ニュートリノのスペクトルの導出についても議論したい。 (参考文献) 論文の内容の中からニュートリノスペクトルに関する部分を以下に記述しました。 Qian, Y.-Z. and Woosley, S. E. (1996), Astrophys. J. 471, 331-351. ニュートリノ駆動風の解析モデル ニュートリノスペクトルとYeの関係式を導出((77)式) Hoffman, R. D., Woosley, S. E. & Qian, Y.-Z. (1997), Astrophys. J. 482, 951-962. r-processの論文。3rd peak核種の生成するニュートリノ駆動風の条件 Wanajo, S. (2006), Astrophys. J. 647, 1323-1340. νp-processの論文。Yeに対する主要生成核種の図が掲載(Fig. 13)。 Roberts, L. F., et al. (2010), Astrophys. J. 722, 954-967. r-processの論文。νe, νebarの温度に対してr-processがどの程度進むかについて議論 (Fig. 1)。 Wanajo, S., et al. (2011), Astrophys. J. 729, 46 (18pp). νp-processの論文。Yeに対する生成量分布の図が掲載(Fig. 5)。

Presentation Materials